Bitter Kiss各曲感想

なんで今頃?
って思うかもだけど。
このアルバムの曲、あんまり聞き込めてないなぁと最近思ったんですよね。
別にきっかけとかはないけど。
ライブで、イントロ聞いてぱっと曲名が出ないようじゃ嫌だったし。
デビュー3周年とかも特に関係ないです。
ただなんとなくタイミングが重なっただけで。

なんで発売当初それ出来なかったのーって考えると
モロにラブライブ!のファイナル間近だったからっての大きいよね……。
まぁでも別に時間が経っても良さは変わらない。
今から知るのも遅くはない。
思い立ったが吉日なんて言ったりもしますからね。

同系統の曲を敢えて集めたアルバムだから印象が被るのは自然なこと。
でも同時に当たり前な話、この6曲は全くの別物。
ざっくりした印象が同じでも細かく見ていけば必ずその違いを知ることが出来るし、
それは同時にその曲固有の良さを知ることにも繋がるよね。

まずは全体として。
当時の内田さん的にEDMを集めたSweet Tearsは革新的だった。
with youくらいしかそれらしいEDMがなかった内田さんの曲に、
一度に6曲もパターンを増やした。
(まぁ"笑わないで"とかSweet Dreamerはダンスミュージックというよりエレクトロポップじゃないのという話は今回は割愛)
でもBitter Kissは。
ロックはもうやっていたじゃないか。
こちらはもう聴きなれた今までの曲調。
そう思いかけるけれど、実際は案外そうでもない。
内田さんの主軸はポップロック。
シリアスロックは当時ONE WAYとLike a Birdくらい。
そう思うとそれまで概念に近かった「格好いい内田彩像」をきちんと形作ったアルバムと言えると思う。

今回に限らず一曲一曲どこがどう良いとか見ていくの、
別に本当はやる必要ないことだと思っている。
そもそも何も考えずフィーリングで聴いた時に良いと思わなければ紐解こうと思わない。
良いことは分かってるんだ。
ただ、それがなんでなのかを自分で分かりたくて分かろうとした結果が残るだけなんだよね。
まぁ結局、「感覚」を越える答えなんてどこにもないんだけどさ。

さて前置きが長くなりました。
個別に見ていきましょうか。


afraid...
正直最もクセの強い曲だからここに差別化はあまり要らないよね。
でもせっかくなら紐解いていきましょう。
当初内田さんは収録が決まった時、その独特さから中盤のアクセントになると思ったそうな。
この曲がリードなのはとても良いと思うけど、扱いが難しくて結果最も歌われていないリード曲となってるよねw
その人形のような無感情トーンは激情の裏映し。
強すぎる感情は振り切れて壊れてしまった。
アルバムの中でも異質な点として、鍵盤が使われていないことがひとつ大きい。
わりとどの曲でもそうだと思うんだけど、鍵盤って感情だと思う。
その繊細な音色は気持ちの機微を表現するのに適している。
そして逆に、このココロが壊れて動かなくなった曲には採用されていない。
要所要所で鳴るギターの、弦が切れたような音も、サビの入りも壊れた心のよう。
相手のココロが離れていくのを感じながら、それでもその人の鎖に絡まれたままの自分。
その先には苦い絶望しかないと分かりながらも逃れられない。
そんな恐ろしい愛の歌。

シリアス
とにかくまずマジでベースが格好いいよね。
唸る低音を意識して聴くだけで楽しい。
間奏の発狂したようなギターの鳴きもめっちゃ良い。
あとみんなライブでカッコ内叫ぼう。
多分みんなも聴きこんでないから覚えてないんでしょ。
覚えて。
イントロでは途中から入るキーボードの激情が
同じメロディのアウトロでは頭から入るのもカッコいい。
お互いの真意が見えないままダラダラと続く関係の歌。
"煙のなか"にいるような関係は居心地の良さよりも不安の方が大きくなっている。
涙を隠すようなことがあったり、安っぽい形だけの約束をされたり。
「いつかの誰かと少し似ているあなた」
というのは理由を探しているよう。
"いつか"も"誰か"も"少し"も全部凄く曖昧。
昔のよく覚えていない想い人に面影が少し似ているなんて、
ただ理由が欲しいだけで本当は意味がないことな気がする。
1サビは「だけど声が違う(But that good. so good)」と続くから、
逆説的に探していたのは好きな理由。
そして「でも声が違うから好きになれない」と続く。
尤も、それ自体もまた後付けの理由。
直後に裏から"でもそこが良いの"と本音が響く。
対照的に「こんなに愛せない」と続くラストサビは、
ぼんやり似ていることを愛せない理由にしているよう。
こちらも結局直後には「Can't stop falling in love」と裏から声が響く。
それを踏まえて見ると、主人公はもう相手を好きになってしまっているように見える。
でもそれなら何故表向きには「こんなに愛せない」と歌うのか。
迷ったフリをしているのか。
それはやっぱり、冒頭で示した不安な部分がココロの引っ掛かりとなっているからだろう。
きっと一歩踏み出しても相手は応えてくれないと感じている。
だから自分に言い聞かせる意味でも愛さないようにして自分を守ろうとしている。
それでも、泳げない人魚は行きついたその場所で夢を見るしかない。
自分のココロは止められない、好きになっていく。
煙のなかから二人抜けだしたなら、こんな迷いはすぐ消えていく。
「抜け出せたら」じゃない。
抜け出してしまったら関係は崩れる。
でも、抜け出したら迷わないで済むことは分かってる。

MELODY
胸が締め付けられるような調べから始まるキーボードロック。
壊れたり冷静に迷ったりしていた前曲たちと比べて直情的な音。
全編を通してキーボードが鳴き続ける。
でもその真っ直ぐさはすべて自分の中にあるだけ。
好きなはずなのに、実際に相手と話をするとケンカしたりすれ違ったりしてしまう。
全然伝えることが出来ない。
想い人と付き合えているからといって、それはイコール幸せではないという歌。
「幸せになりたいだけだから別にあなたじゃなくてもいい」という歌詞。
これは本当にそう思っているのなら今の相手に固執する理由もなく、
別れるのかどうか悩むことさえない。
「『選択肢は星の数だけ』いつも言ってたでしょう?」
と続くようにこれは主人公の言葉ではなく、本心ではなく、
このままズルズルと関係を続けても幸せな未来が見えないから、
そう思い込むことで未練を断ち切ろうとしている言葉に感じる。
付き合ってみたら思ったよりも相性が悪かったという悩み。
そして、それでも好きなことは好きという矛盾。
きっとこの主人公が最も望むのは今の相手に幸せにしてもらうこと。
だけどそれが叶わないこともなんとなく察していて、でも諦めきれない未練の歌。

キリステロ
ライブの定番曲になったね。
afraid...よりもリードしてるまである。
でも案外収録のこれはちゃんと聞いたことない人も多いんじゃない?
歌詞、クッソ厨二病キメてるよね。
Bitter Kissの、というかコンセプトアルバムの裏テーマが発売日付近に準えてバレンタインだから、
これも全体のバランスで見れば恋愛の歌ではあるんだろうけれど、
単体で見ると自由な解釈が出来る曲だと思う。
「心臓貫くその衝撃と骨の軋みをもっと味わえばいい」
は実感を伴ったような言い方、自分も痛く苦しいことが伺える。
「もう怪我する覚悟は出来た」
とも歌っているから、偽りのアイをキリステるのは自分にも代償があるのだろう。
「重ねた時間など重く降る雨に流そう」とある通り、
長い間一緒にいたこともあって自分とって大切で、
多分自分の一部なレベルになっていたそれは、
しかし自分を傷付けるものになってしまった。
当然自分の一部を切り離したらそこは怪我をしてしまう。
それでも、そのままよりはずっと良い。
これを恋愛で捉えるなら
例えば恋人が浮気などをしていて、好きだけどでも別れた方がきっと自分のためだと割り切ったような。
そういう歌。
イントロなどに入っている三味線風の音で少し和テイストがあり、
斬り捨てろというタイトル、歌詞に準えると剣術を思わせるようなイメージも浮かぶ。
ラストサビでリズムが遅くなるところ、ヘドバンしろと言わんばかりで本当に好き。
コンセプトライブでやってた「サァ、キリステロ」で首掻き切るモーション好き。

Ruby eclipse
赤い向日葵の歌。
内田さん曰く、Bitter Kissで最も「遠い」歌。
気持ちも届かず、体も触れ合うどころから相手からこちらを見てくれることすらない。
バラードにアレンジし直しても良いような情感たっぷりのメロディアスロック。
切ない鍵盤と激情を掻き立てるギターやベース、ドラムのサウンドはクサくも沁みる。
いちいち主人公の願いが諦観に満ちていて切ない。
「夢の中でも良い、君に会えるなら」「あと少しだけ……お願い、眠らせてよ」
君に会いたいと願うことは、叶わないことを願うということ。
それはただ空しくツラい。
それならばあと少しだけで良いから眠りたい、そうすれば夢で会えるから。
「教えてよ、君を愛する忘れ方を」
君を愛することを忘れられたら、こんなにも苦しむこともなくなる。
そうやって半ば諦めているのに、
それでも不意に「この胸の叫びよ、届いて」「もっと近くに来て欲しい」
そう願ってしまう。
叶わないことが分かっていて、
願っても悲しみしか産まないことが分かっているのに。
「もう良い、要らない。されど深く巡る君の根」
君を諦めきることも、君に思いを告げることも出来ないまま。
ただ前にも後ろにも動くことが出来ないまま君を見つめる。
それは本当に向日葵のよう。
「重みを持たぬ君の歪んだ声」辺りからサビまで続く狂気的なキーボードの調べは改めて一聴してほしい。
もしPVを撮るなら是非レッドスケールで撮ってほしい一曲。
赤一色の世界での向日葵畑はきっと狂気的かつ絶望的だろう。

絶望アンバランス
こちらもメロディアスピアノロックだが、
決定的に違うのはRuby eclipseはキーボード中心で、こちらはピアノ中心。
無論キーボードほど強い音は出ないが、切なさと夜のような閉鎖感が強くなる。
そもそも「絶望アンバランス」という言葉はどういう意味なのか。
それは「輝くたびに影ばかりきわだって悲しみ照らす」という部分が象徴していると思う。
この歌詞は例えば恋人の浮気を知ってしまったら、
今までの楽しかった思い出も今その人の傍にいることも全て絶望に変わってしまう。
そういった状態を歌っている。
だから、そんな風に些細なきっかけで希望が絶望に変わってしまうそのアンバランスさを象徴した言葉なんだと思う。
また「心の中のモンスター」とは、
恨んでしまうそれは元々は自分にとっての希望だから、恨みたいものではない。
大切だったものを恨んでしまう自分。
その姿はもはや見るに堪えないものになっていた、ということに思える。
どうしても恨んでしまってコントロール出来ないという意味合いもあるように思う。
ただそれでも。
それでも毎サビの最後には前を向いて走り出している。
「いつかこの想いいやされる時が来る」だから、
"いつか"だから、今もなお絶望に苛まれてはいながら、それでも走り出している。
絶望を振り切るために、希望へ向かうために。
とても強く、格好いい女性像が浮かぶ一曲。
イントロの「テューン」ってピアノからキーボードに切り替わる音好き。
ライブだとタイミング取るのが難しいのか切り替えが難しいのか採用されてないけれど。
ちなみになんだけど、
「鏡にうつった自分の姿 まるで」
の後の一言は歌詞にないの知ってた?知ってるか。
「言葉にするのもおぞましい姿」みたいな印象を受けてドキドキするよね。

てなわけで、Bitter Kissの世界観とかを見てきたけれど。
ポジティブに取れるところも敢えてBitterに解釈したりもして。
この数日毎日のように重い世界に浸っていたらなんか、憂鬱になってきました。
でもそれだけパワーのある曲たちだなと改めて思ったりもしましたね。
特にこのアルバムはただ「ロックでカッコいい!」っていう面を楽しむのも勿論いいと思うし、
それがメインの良さだとも思うけど、
そこに潜む悲しみや絶望、痛みもこの曲たちの良さだし、
「内田さんは可愛いだけじゃない」と布教の中で嘯くのなら、
それにはこういった曲たちをちゃんと知ることが説得力にも繋がるかもなぁとも。

まぁ、ほんと、別にボクみたいに一個一個「これはこういう世界で」とか
面倒で大変なのでやんなくていいんだけど、
みんな久々に?初めてちゃんと?集中してBitter Kiss聴いてみたらいいんじゃないでしょうか。
「ノリが良い」だけじゃない曲たちの良さが知れるかもね。

Sweet Tearsの方の各曲感想も、まぁ、気が向いたらやってみるかも。
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もう、ロックに頼らなくてもいい

"可愛い"ことと、"アイドル"であることは別ということ。

さっくりと言ってしまうと、ICECREAM GIRLの個人的総評はこうなります(タイトル込み)。
そもそも。
アップルミントの頃。
内田さんは根本的に歌手活動自体に抵抗があったことは周知の事実ですが。
それでもどうしてもというのなら、歌う曲調はロックがいいという風にも仰っていました。
これは彼女が個人的にロック系統の音楽が好きというのも、実際にそう言っていましたしあるでしょう。
ただ、それだけではないと思うんです。

アップルミントが発売した年は2014年。
そう、ラブライブ!大盛況の年ですね。
誰が言わなくたって、内田さんのソロ活動が企画として成立していたのは、
いや、そもそも企画されたこと自体がラブライブ!での成功によるものであることは自明の理でしょう。

だからこそ、内田さんはいつも恐れていたように感じます。
ステージから降りてもアイドルを求められることを。
あくまでも内田彩がしたことなのに、南ことりのイメージに直結してしまうことを。
「声優業に悪い影響があるのではないか」と恐れていたことは公言しています。
それはそのことりのイメージに直結させられてしまうというところが怖かったんじゃないかなと思います。
無論、南ことりちゃんとしてステージに上がるときはことりちゃんそのものになりたいとすら思っていたことは確かです。
ただ「私は南ことりちゃんではないんだよ」ということも、……決して成れないことも理解していました。

「音楽活動はしたくなかった」なんて歯に衣も着せずに公言してしまうところは代表的ですが、
他にも結婚したい、結婚したいと繰り返したり、彼女は自分の欲望に素直なところがあります。
もちろんそれは彼女の魅力でもありますが、アイドルには全く向いていない性格傾向でしょう。

だから、「どうしてもというならロック」なんだと思います。
格好いい曲調、アイドルとは離れた曲調。
そういう意味での「ロック」だったんじゃないかなというのは、当時のインタビューの端々から感じ取れます。
(アイドルがギャップとしてロック系統の曲調を歌うこともありますが今回は割愛)

また、アイドルのような音楽は出来ないと思っていたのは声優業との絡みだけでなく、
内田さん本人はなかなか自分の容姿に自信が持てていない面も大きいでしょう。
「可愛くない私が、アイドルをやるなんて無理!」という部分もかなりあったように思います。

ただ、この3年間で情勢は変わって来ました。
内田さん自身も変わってきました。
内田彩と南ことりを同一のように考える人は減り、
それに応じて……というのも違うかもしれませんが、
南ことりではなく「内田彩」を受け入れてくれる世界を感じたこと、
また、少しくらい可愛いことをしても受け入れてくれるファンがいることを感じたことで、
EDMというジャンルに手を出し、
color stationやParty Hour Surpriseではダンスを披露しました。
そして、今ではEDMは内田彩の音楽ジャンルの中でロックと並び主要ジャンルの1つとなっています。

キュートな曲調に乗せてダンスを披露する、というのはロックと比較すればかなりアイドルに近い演出でしょう。
となれば、アイドルと勘違いされることを恐れていては出来ないことだと思います。
無論、アイドルとは一線を画した音楽ジャンルではありますが、多分デビュー当時はアイドルに近づくことも怖かったと思います。
一度そちら側に振れてしまえば戻るのは難しいですからね。


そして。
前置きが長くなりすぎましたが。
今回のICECREAM GIRLです。

バンドサウンドとロックの区別は厳密には難しいですが、
ロック系統の曲の収録が後ろ寄りになっているところはポイントだと思います。
また、曲数もEDMを増やしたことで相対的には減っていることは確かです。

ただそれでもボクが言いたいのは決して「ロックを捨てた」わけではないということです。
まぁ聴いて頂いた方には各々感じ取ってもらえればそれで充分ですが、
Under Controlを筆頭に後半はポップテイストながらロック中心だと思います。
ここでやっとタイトルに触れたいのですが、
だからあくまでも、ロックに頼る必要がなくなった、というのが正しいと思っています。
ロックに依存しなくても、内田彩を内田彩として見てくれるファンがいてくれるという信頼の証。
内田彩が歌を歌っても嘲笑せず受け入れて喜んでくれるファンがいるという喜びの表れ。

そしてYellow Sweetがリード曲となり、What you want!もリードの可能性がありつつ1曲目に収録。
つまり、今回のアルバムはデビュー当時には持つことのできなかった、
EDMという新しい武器で全力をかましてきたアルバムだと考えています。

次は構成の話。
アップルミントはロックで始まり、間にポップを入れたのち、
ラストもドーナツ……=ロックで締めている。
このアルバムではまだEDMはない。
前述の通り、この時はロックに傾倒している。

Blooming!は、Blooming!からGo! My Cruising!まで
ポップだったりビターと味付けを変えながらもずっと主軸はバンドサウンドのロックで来て、
Let it shineはややポップテイストを強め、ハルカカナタで毛色を変え、
ペガサス号からエレクトロなポップになり、with youという内田彩EDMの代表曲で終わる。
そういった構成になっている。
ここで初めてEDMに挑戦し、その成功は2枚のコンセプトアルバムに如実に表れた。

それを踏まえてICECREAM GIRLを見てみると、Blooming!ほど明確な分離はしていない。
というか、単純にジャンルが増えた。
What you want!、Yellow Sweetは代表的なEDMだ。
そこから始まり、間は新境地に挑戦しつつジャンルを綯い交ぜにして、
ラストはFrozenからOrdinaryまでロックテイストで締めている。
構成としてのポイントは間よりも、EDMで始まりロックで締めているところだと思う。
完全に逆転させてきた。

これが成立したのは、何より内田さんが可愛い曲を歌ってもアイドルを求められたりしない世界を感じたからだと思う。
EDMであるYellow Sweetをリード曲にするということは、それがたくさんのところで流れ、PVまで作るということだ。
これを、afraid...のようなロックを携えずに出来たというのは一段階乗り越えた印象がある。
ただ、EDMをリードにしてきたことは新境地ではあるのだが、そこに意表を突かれた感覚はなかった。
コンセプトアルバムで完全に主要ジャンルは2つだと示してきていたのもあるし、
ライブでもいつも重要な部分を担っていたからだろうと思う。

Yellow Sweetが公開された頃、リード曲っぽくないなんて意見もあったけど、
これは恐らく全体構造としてラストにロックが来るということがファンサイドにはまだ伝わっていなかったため、
Blooming!の感覚だとラスト曲がリードに来たような感覚になったのかもしれない。

また、内田彩のリード曲と言えばロックみたいな固定観念があったようにも思う。
コンセプトアルバムはアルバム1枚丸々同一のコンセプトだからリードもEDMになるのは当然であり、
また隣にafraid...があったことでもFloating Heartは別と考えられがちだった。
ただ、ここで実はFloating Heartを別にしてはいけないんだろう。
with youを継承して出来たこの曲が、EDMをリードに出来るという裏付けを担ったわけだからだ。
無意識的に別だと考えてしまった人がいたのは、
SUMILE SMILEが一番近年の曲であり、そのイメージがBlooming!やアップルミントの頃を想起させたからなんじゃないかなと思う。

さてこのSUMILE SMILE。
実はアルバムに入れるとなると結構実は曲者だったんじゃないかな。
何せ気合が入りに入っている。
チカラがありすぎる。
メロディの数も多いし、シングル曲でみんなが既に好きになっている。
押しも押されぬ名曲と言い切ってもいいでしょう。
井上さんも作家さんたちに強烈にプレッシャーをかけて作って頂いたと仰っていたし、
実際に作曲の持田さんもツイッターでこの曲に対する熱い思いを呟いておられます。

井上さんは毎回全曲シングルカットされても恥ずかしくない曲を揃える覚悟をしていると。
それ故にシングルは出してこなかったと仰っていました。

多分なんですけど、内田さんが故障していなかったら井上さんを筆頭にスタッフ陣は去年もアルバムを出したかったんじゃないかなと思うんです。
或いは秋は製作期間として年明け出していたかもしれない。
なんにせよ、シングルを出したのは曲数を減らしながらもリリースを止めたらファンに飽きられる可能性の二律背反の中の苦肉の策だったような気がします。
ただだからこそ、出すのであればアルバムに慣れたファンに、
2曲しかないという物足りなさを感じさせないだけのクオリティの曲が必要だったはずです。

また、内田さんは武道館で全曲歌いきって一旦満足し、それで終わってもいいかなと思っていたそうです。
ただ、SUMILE SMILEを作り、歌ったことで再始動に意欲的になれたと語っています。
結果論かもしれませんが、この曲が無ければ内田彩の音楽活動自体が終わっていたかもしれません。

それだけの思い入れのある曲を、じゃあいざアルバムに入れた時。
SUMILEが頭一つ抜けていちゃダメなんですよ。
それは相対的に他の曲が劣ることになってしまう。
これが仮に3曲目とかに入っていたら、そこで一気に持っていかれて後は惰性になってしまう。
11曲目。
この配置はもうここしかないという場所だと思う。
ラスト12曲目でもメッセージ性が強すぎる。
最後の盛り上げ役としてアルバムを後ろからパワープッシュする立ち位置に置いたこの配置は完璧でしょう。
最後にがっと盛り上げてOrdinaryで爽やかな涙を流して終わる。
これ以外になかったとも思います。

パワーが強すぎるこの曲は正直アルバムには収録されないかなと思っていました。
でも実際にこのアルバムを聴いて、きちんと「アルバムの曲」としての新たな役割を完璧に全うしたSUMILE SMILEの姿を感じて感嘆しています。
同じ曲なのに、聴いた印象すら変わった気がします。

また、これが可能だったのは、他の曲全てがシングルカットされても……
SUMILEと同じ立場になっても恥ずかしくない名曲揃いだからだと思います。
クオリティが伴っていなければ、仮に後ろに配置しても結局誰が聴いてもSUMILEが最強のアルバムになってしまったでしょう。
SUMILE SMILEが一番好きという人が存在することはいいんです。
でも、誰が聴いてもそうなってしまうのはダメだと思うんです。

そういった意味でも、ラストにロックを持ってきて終わるこの構成になったんだろうと思う。
纏めるなら、EDMという新たな内田彩の代表ジャンルをきちんと武器として使い、ロックと肩を並べさせる序盤と、
SUMILE SMILEをアルバムに馴染ませるためのロックで締める終盤。
そう考えれば、自然とBlooming!とは逆順の構成という部分に帰結していったように感じる。

尤も、このマクロ的な視点の話は完全に中盤を無視している。
だから、Blooming!と真逆にしただけで終わり……なんて簡単なものではない。
次はもう少し細かく見て行こうと思う。
てなわけでミクロ……もとい各曲個別に感想のようなものを。

What you want!
Yellow Sweetとは同一ジャンルだからこそ比較すると見えてくるものがある。
この曲の特徴と言えば何よりもラップ調で歌われるローテンションビートと伸びやかなハイトーンのミックスだろう。
2つの内田さんが掛け合いのように歌いかける。
ライブではコロコロと歌い方を変えるその様を楽しめる一曲になるだろう。
また大量に散りばめられた英単語で構成された、甘くオシャレでキラキラした女の子の世界観は夢見がちで浮かれているものの、純粋なココロで感じれば憧れない女性の方が珍しいのではないだろうか。

Yellow Sweet
同じ甘さでも、What you want!の方は言ってみればライフソングと言った感じだ。
対してこの曲は砂糖菓子なんて目でもない甘々ラブソングになっている
もう内田彩の楽曲を片っ端から聴いている人には慣れ親しんだhisakuni節が全開の曲と言える。
何よりも2サビ終わり後の強烈な転調は今回も健在。
また、良し悪しではなく違いとしてこの曲の方が音数が多く、電子音が洪水のように流れてくる。

Say Goodbye, Say Hello
スニーカー・フューチャー・ガールを彷彿とさせる疾走感。
タイトルだけ見ると誰かとの出会いや別れかと思ったが、
蓋を開けてみると自分との出会いと別れを歌った、内面的な歌だと気づく。
ポップテイストながらここで初めてのバンドサウンド。
1、2曲目でふわふわと夢見心地になった空気感を入れ替えるような、爽やかに駆け抜ける涼風のような曲。

Close to you
新たに挑戦したフォークビート。
同じミディアムバラードでもハルカカナタとはまた毛色の違う、ビートの効いた、散歩するかのような軽快さがある。
また、全体的には曲調に合わせた大人しい歌い方ながらサビの突き抜けるようなハイトーンは鋭く強い思いを感じさせる。
大人っぽい落ち着いた曲調ながら、その歌詞を読み解くと案外子どもっぽいというか若いというか、"まだまだ恋してる"感が切なく光る。
「誰よりも笑顔にしたい」とか「空気みたいな愛よりも引っかかりたい」みたいな積極性に表裏する必死さみたいな恋に溺れる感は落ち着いた大人というよりもまだまだ恋愛を楽しむ幼さを備えているように感じる。
「そばにいて」のフレーズが伸びる瞬間に入る「Uh~」が好き。

Holiday
初めて「作詞:内田彩」という情報が公開された時は内田さんが自発的な思いを形式化するなんて、いったいどんな心境の変化よ!って焦ったけど、
その実、黒須さんの描いた世界をより大きく広げてみたという、
言い換えてみればこの曲の主人公の思いを想像して拡張するというある意味声優らしい道程で生まれていて納得した思い出。
「初作詞は思いが詰まりすぎて冗長になったりとか、綻びが見えやすい」って話はよくあるけど、内田さんがそうなっていないのは内田さん自身に伝えたい思いがあまりないからだろうなと思う。
内田さんは音楽において伝えたい思いややり遂げたい信念がないから、内田さんの歌にはただ音楽を楽しんでいるだけという物凄い純粋さがあると思ってる。
曲調としてはポップながら、イントロからブイブイ言わせたベースはもうわかりやすくベーシスト作曲。
あとリズムが気持ちいいのもリズム隊らしさを感じるよね。
黒須さんに内田さん作詞の部分の感想聞いてべた褒めされて「えへへえ~?(えへへなのかえー?なのか判然としないアレ)そうですかぁ~?」ってへらへらしてる内田さんが見たい、見たくない?

Under Control
とにかく縦ノリで騒ぐ曲。
口触りよく日本語と英語が入り乱れる。
これは夢を見たいけど、その過程はいつもハードコアで時々夢に疲れてしまって、それでもまた前を向いてを繰り返していく歌。
この曲が内田さんに似合うのはEDM系列のようにふわふわな夢から、時々醒めてはまた夢を楽しんでというふうにも考えられるからな気がする。
内田さん的にはCDは小綺麗に纏まってしまっているらしいので、幕張でどんな大立ち回りを魅せてくれるのか楽しみ。
楽器はギター2本とベースドラムのみと、
キーボードもヴァイオリンもない純ロック、オールドロックの構成だけど、
ライブではキーボーディストだけ下げるわけでもないだろうし、
オリジナルアレンジになるのかな。
それも楽しみ。
しかしヲタクはBメロの「Hey! Hey! Hey!」をちゃんと一回休み出来るんですかね……?
いや、別にしなくてもいいけどさw

カレイドスコープロンド
イマドキ逆に珍しくなった典型的歌謡曲を彷彿こそさせるテイストながら、
当時のソレよりもずっとハイテンポでビートが効いているためかなり力強い。
言うならばネオ・歌謡曲といった感じの曲。
多分当時の人に歌謡曲として聞かせたらウルサイって言われるような、
ロックとかに慣れ親しんだ現代だから成り立つ歌謡曲という印象。
花魁のようなその歌い方は自然と和装をイメージさせる。
ロンドとは言うけど、音楽としてはロンド形式ではないよね。
万華鏡のように、ロンドのように心模様も回り……という情景の比喩。
2Aメロの左右吐息がエロ。

Blue Flower
後悔と絶望の花。
大サビに向けた変調はピンク・マゼンダでは自分の世界が一気に広がっていく演出となっていたが、
この曲では世界が目まぐるしく変化していく演出になっているように感じる。
そして最後にはピアノがひとり取り残される。
何に対する後悔なのかを明確にしないことで、絶望だけがそこに在る。
夜、暗い部屋の中でソファーの上から降りることも出来なくなっている情景。
最後に朝日は昇っても、カーテンに遮られたその部屋に光が差し込むことはない。
そんな世界が浮かぶ。
閉塞感に息が詰まりそうなビターミディアムバラード。
次曲以降からラストまで一気に駆け抜けていくためのテンポダウンも担っている。

Frozen
Blue Flowerが氷のような冷たさと例えるなら、
この曲は吹雪のような力強さを備えた冷たさ。
ここから疾走感が光る曲が続く。
寒いから、冷たいから、寂しいから、あなたの温もりを知ったよという、
寒空の下で飲むホットコーヒーのような暖かさを秘めている。
2サビが終わったところがちょうどほぼ真ん中っておかしいでしょw
持田さんは本当に手数が多いというか、1曲の中でのメロディ数が凄い。
それでいて4分半に纏まっているから目まぐるしくも楽しい。
そういったところも吹雪のよう。
Aメロ「ところ」「重い」の上ハモが綺麗。

EARNEST WISH
曲調だけで言えば最後に来てもおかしくない、冒険譚を感じさせる曲。
荒野の夜空と、地平線の夜明けを迎えるような異世界感がある。
切なげに光るヴァイオリンとピアノの調べと、ギターベースドラムが奏でる激情が儚さと強さを感じさせる。
基本的に内田さんの楽曲は、内田さんのこういう面を表した曲、内田さんのこういった面を引き出したくて制作した曲など、「内田さんのための曲」が中心になっている。
でもこの曲は「曲のための内田彩」だと感じる。
この曲ほどの切実な思いや願いは普通に生きている内田さんではなかなか体験しがたいものであり、等身大とは言い難い。
実際コンペの時、(歌詞こそ違ったものの)内田さんも壮大すぎるのではと萎縮していたらしい(スタッフから好評だったために採用された)。
ただだからこそ、普段内田さんが持っていない内田彩を引き出してくれる曲でもある。
その非日常感が魅力的な一曲。

SUMILE SMILE
上ではこの曲の立場を語ったので、内容でも見てみましょうか。
まずイントロ冒頭のギターノイズが好き。
少し掠れてるけれど、今となってはその切なげで儚い声が曲調に合っているとさえ思える。
ポップで、明るくて、前向きで……でもそこにある涙。
涙のしずくがなければSUMILEの花は咲かないと表現したPVの美しさは筆舌しがたい。
「ハートに染み込む涙が……」の裏で鳴り響くイントロと同じフレーズのギターも美しい。
「こぼれちゃいそうだよ」のところで口角が上がっているのを音で感じる。
笑顔の目じりでこぼれる涙は、あまりにも切なく暖かい。

Ordinary
ピアノとヴァイオリンが光るピアノ・ポップ・ロック。
この曲もEARNEST WISHと同じくらい壮大さはある曲だが、
歌詞が描く世界観が内田さんの曲に仕立て上げている。
尤もこの曲は、完成した歌詞を見て編曲を一新したらしいので、
こちらは「敢えての壮大さ」だろうと思う。
声優さんが声優業で喉を壊し、それを乗り越えて今在る。
そんなありふれた話は物語としては三流だ。
ただ、それが内田さんにとって、自分自身のこととして起こったら。
誰かにとって、誰かから見て大したことでないことも、
自分にとっては何にも代えがたい重大なことは往々にしてある。
その、他の誰の視点でもない内田さん自身から見た内田さんの苦しみ。
そしてそこから解放された今。
その表現のための壮大さだろう。
客観的に見て壮大でないことでも、内田さんのことは内田さんにとっては壮大で重大だ。
その苦しみと喜びは誰に分かるものでもなく、
同時に「"自分にとって大切なモノを失いかけて取り戻したこと"について歌った曲」。
そう考えれば誰にでも共感されるものにもなる。
また、去年苦しかったから今が楽しいという文脈は、
涙の先に笑顔があるというSUMILE SMILEの文脈と同列だ。
この2曲は密接なものを感じる。

てなわけで。
1曲ごとに見てきましたが。

マクロで見ていた時に述べたように新しい武器としてはEDMを持ってきた。
そして既存の武器としては「たくさんのジャンルが歌えること」。
ただこれはファンには分かり切ったことであり、
そこに対してどうすればサプライズが出来るかという、
一段上に上がれるかという壁に対して更にジャンルの幅を広げるという、
さらに強化する方法で来ていることが分かる。

しかし幅を広げすぎてしまうとアルバムの統一感が崩壊してしまう懸念があった。
それを踏まえ、全体の統一テーマとして「大人っぽさ」がキーワードになっている。
内田さんも自身で仰っていたけれどこのアルバムは30を越えて初のアルバムであり、
また、アイドルの役に全力投球してステージに立つ時代がひとつの終幕を迎えてから初めてのアルバムでもある。
そのためもっと多様な歌い方は可能だけど、敢えて大人っぽい歌い方に絞っているという。
それは聴いた側としても感じられる。
まぁこれに関してはフィーリングの話に近いので、各々感じ取ってもらいたいところ。

あとは細々した話。

EDMってのはつまりエレクトロニック・ダンス・ミュージックなわけで。
電子音構成のダンスミュージック、客を躍らせるための曲と言える。
そのためにリズムがはっきりと分かりやすくされている。
だから、ロックと相性がいいんだよね。
hisakuniさんは絶望アンバランスとかも作れるので、
EDMロックみたいな主軸を融合させちゃいましたみたいなのも、
フルアルバムにあっても面白いかなと思った。
まぁあれは内田彩のリードにするにはちょっとビターすぎるのでもう少しポップである必要はあるかもだけど。

あと今回佐々倉さんの楽曲が入ってなかったのは意外だった。
と、いっても殆どの曲がコンペで採用されているので、
たまたまちょっと今回は落選してしまっただけなんだろうけど。
「内田彩似合わせ」という区分では一級品の方だと思うのでまた聴けるのを楽しみにしています。

東さんの編曲がないのも意外~~と最初思ったけど、
作曲家陣をよく見ると、単純に今回採用されたPAS+所属の方が黒須さんだけで、
その曲も黒須さんが自身で編曲までしていたからってだけでしたね。

いい加減まとめますか。

少しずつ音楽が楽しくなってきたところを挫かれてしまった去年。
「音楽なんてやりたくない」が、「音楽、もしかしたら楽しいかも」に変わり始めたところだったろうと思う。

でもその傷は避けては通れないものだった。
ラブライブ!のファイナルで全力を出し尽くして限界突破しないなんて、正直考えられなかっただろう。
それで故障してしまってもそこは本望でさえある。
ただ、それと事実声がまともに出ないという現実の苦しみは別の話だ。

それを越えた今。

やっと内田さんは、音楽を純粋に楽しめるところに来れた。
やっと、何にも縛られることなく音楽に意欲的になれる段階に来た。

それはEDMをリード曲にすることだったり、
自分で歌詞を書いてみることだったり、
ファンの掛け合いを増やすためにBメロを長くしてもらうことだったり、
凄く悲しい曲を作ってほしいと歌いたいモノを依頼したことだったり、……

そういった端々からも現れている。
見えているところだけでもこれだけあるのだ。
きっと語られていないところでも色々な楽しみを見つけていることだろう。

「音楽って楽しい」に辿り着けたその喜びが、このアルバムには詰まっている。